プロテインといったら筋骨隆々で黒光りしているおじさんがジムで飲んでいるもの。なかやまきんに君のようなボディビルダーやプロレスラーが愛飲している変な色の液体。
トレーニングをしていない一般の人にとって、プロテインというものはなんだか怪しい、変な粉・液体だと誤解されていることが多々ある。
そんなプロテインとは何か。なんの役に立つのか。なぜ筋トレをしている人やダイエットをする人が飲むのか。そんな疑問に答えていきたい。
プロテインとは何なのか:ただのたんぱく質
@hardgainer_GT
「プロテイン〇〇グラム配合」と書かれた飲み物・食べ物をコンビニやスーパーで見かける機会がここ1、2年で一気に増えた気がする。
簡潔に言おう。プロテインとはタンパク質だ。怪しいものでも何でもない。
試しに英語の辞書でproteinと調べてみてほしい。

英語でプロテインは「タンパク質」を意味する
ウィズダム2より
プロテインは三大栄養素の一つ、たんぱく質の英語名。人間の体を維持・増進するのに欠かせない、誰もが毎日口にしている栄養だ。牛乳にも魚にもお米にだって含まれている。
では、筋トレをしている人やダイエットをしている人が飲んでいる「あの粉」はなぜプロテインと呼ばれているのか。
「あの粉」を日本語で正確に表現するなら、
- プロテインパウダー
- プロテインの粉
- たんぱく質を多く含んだ粉末
といった方が伝わりやすいかもしれない。
いわゆるプロテインパウダーは脂質、炭水化物をできる限りカットして純粋にたんぱく質だけを摂りたい人向けの粉末なのだ。
例えば私がよく飲んでいるアルプロンのホエイプロテインの栄養表示は次のような感じ。

プロテインの栄養成分表示はだいたいこんな感じ
脂質や炭水化物が1gほどなのに対してたんぱく質が15g以上とかなりたんぱく質豊富ということが分かる。
たんぱく質の割合が多い粉末のことを一般的にはプロテインパウダーと呼ぶ、そう覚えておこう。
ちなみにたんぱく質の粉末があるのなら、炭水化物や脂質の粉もあるのかというと、実際にある。
例えば炭水化物だったら粉飴(こなあめ)(1)。運動をする時のエネルギー源として使う人が多い。粉飴と漢字で書いてあればなんとなくイメージがつくし、変なものだという気も少し薄れるかもしれない。
純粋な脂質だけのパウダーなら日清MCTパウダー(2)が有名。日清オイリオが販売している粉状の脂質で料理に加えて摂取エネルギー量アップなどに活用できる。
名称が受け入れられているビタミンC、日本ではまだまだ馴染みの薄いプロテイン
ビタミンB群やビタミンC、ビタミンD。これらのビタミン類はよく名前を目にするし、体に良さそうというイメージがあるかもしれない。
でもこれらのビタミン名は名称、実は下記のような名前が正式名称。
- ビタミンB2:リボフラビン
- ビタミンC:アスコルビン酸
- ビタミンD2:エルゴカルシフェロール
ビタミンCと聞けば健康的と思うかもしれないけど、アスコルビン酸と聞くとちょっと危ないものかと思ってしまうかもしれない(実際はそんなことはない)。
プロテインもこれと同じで、たまたま日本で「たんぱく質」と呼ばれている栄養素が英語で「プロテイン」と呼ばれているだけ。なのでプロテイン=変な物質と勘違いしないでほしい。
ドーピングやステロイドとプロテインの誤解
@hardgainer_GT
プロテインを飲む=筋肉モリモリになりたいの?みたいな誤解も多いので啓蒙活動はまだまだ続きます。
「プロテインは怪しいものだ」とイメージする人が少なくない理由の一つが、ドーピングやステロイドという言葉との混同にある。
全部カタカナだし、たしかに筋トレや筋肉に関連するワードなので、フィットネスやジムとは縁のない人からしたら違いも伝わりにくいかも知れない。
違いを明らかにするためにも3つの単語を1つずつ丁寧に説明していこう。
- プロテイン:たんぱく質のこと
- ステロイド:筋肉増強剤のこと
- ドーピング:力を向上させる目的で薬物を使用する行為
プロテイン:違法性のないたんぱく質のパウダー
上で説明したように、プロテインとは単なるたんぱく質の粉末のことである。カタカナ名称なので分かりにくいが、日本語に訳すのであれば「高タンパク食品」や「純たんぱく質粉末」のようになる。
もちろん違法性はなく、脂質、炭水化物と並ぶ三大栄養素の一つとして体の維持に欠かせない栄養の一つ。
私たちが日常的に食べる食材、例えば魚介類や赤身の肉類にも含まれているのでプロテインパウダーを買わなくてもたんぱく質自体は摂取できる(ただし普通の食品からのみで筋肉を増やすレベルの量を摂取するのはなかなか難しいのでプロテインを併用する人が多い)。

ステロイド:正式な大会での使用が禁止されている筋肉増強剤
対して、ステロイドは筋トレやボディビルなどの分野において筋肉増強剤として一部のユーザーに使用されているもの。
副作用やその他の競技者とのフェアネス(公平性)などにより、ステロイドユーザー(ステロイド投与者のこと)の出場を制限している大会も多い。
ちなみに、普通にジムに通っていたり、筋トレをしている分には出会うことはない。自分もジムはかれこれ10箇所以上訪れているが、そういった物にも利用者にも会ったことはない。
ドーピング:薬物を摂取する不正行為
ステロイドをはじめとする薬物を使用することを指す言葉がドーピング(3)。オリンピックなど国際的な大会でも毎回、ドーピング検査が行われているので耳にしたことがある人も多いと思う。
ドーピングとは「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」のことです。
引用:アンチ・ドーピングとは|日本アンチ・ドーピング機構 | Japan Anti-Doping Agency (JADA)
このようにステロイド(筋肉増強剤)・ドーピング(不正行為)とプロテインはそもそも同ジャンルの言葉ではないので、誤用や混同には注意してほしい。
- プロテインはたんぱく質を濃縮した粉末
- ステロイドは大会での使用が禁止されている筋肉増強剤
- 禁止薬物を使用する不正行為がドーピング
プロテインが安全なものだとしても、2019年の日本において世間一般から万人に知られているものではないのは確か。人によっては嫌悪感を抱く人もいるかもしれない。
では、そんなプロテインはなぜ多くの筋トレ・ダイエット中の人に愛用されているのか。プロテインが誰にどんなメリットがあるのか、もう少し詳しく説明してみよう。
プロテインは誰のもの?:なぜ筋トレにプロテインが必須なのかを説明する
@hardgainer_GT
プロテインが存在していなかったら筋トレの難易度は数倍に跳ね上がります。それぐらい筋トレにプロテインは欠かせない存在。
- 「筋トレとプロテインはほとんどセットのようなもの」
- 「筋トレをしたらプロテインを飲むし、プロテインなしでは筋トレできない」
筋トレをある程度実践している人の多くはこんなことを思っている。
なぜ彼ら・彼女らがこれだけプロテインLOVEなのか。それは筋肉を大きくする仕組みにある。
筋肉は破壊と再生を繰り返し肥大する
「東京の街はスクラップアンドビルド(破壊と再生)を繰り返して今の形がある」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
パリのように古い街並みを保全している都市もあれば、東京のように過去のものを壊し、そこに新しいものが生まれることで新陳代謝が活発になり街が活性化するといったイメージだ。
筋肉もこの点においては東京と同じだ。意外かもしれないが筋トレというのは筋肉を破壊すること。筋トレは筋肉の筋繊維を傷つける行為である。
こうして破壊されてしまった筋肉は自己再生しようとする。これが筋肉の再生。
東京の街の再生に多くの物資や資源が必要なように、筋肉の再生にも多くの栄養が必要になる。その栄養の筆頭なのがたんぱく質、つまりプロテインなのだ。
たんぱく質は三大栄養素の1つ
家庭科の授業で習ったであろう体を支える3つの栄養、
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物
たんぱく質はその中でも体の再生や体力の回復に影響を与える栄養素として知られている。英語にしたならこうだ。
- プロテイン(protein)
- ファット(fat)
- カーボハイドレート(carbohydrate)
字面だけ見たら、プロテインよりもカーボハイドレートの方がやばそうな物質に見えないこともない。でもカーボハイドレートは炭水化物のこと。私たちが毎日食べているお米やパンの主成分である。
たんぱく質は不足しがちな栄養素
お米やパンなど、主食には多くの炭水化物が含まれるから、基本的に私たちが1日で食べる食事を通して1日に必要な量は十分に取ることができる。
脂質についてもそうだ。CMで「美味しいものは脂肪と糖でできている」と流れているように、だいたいの美味しいものには脂質が多く含まれている。ラーメンも唐揚げも、ピザやケーキにだって脂質は入っている。
それに対してたんぱく質はどうだろうか。魚やお肉に多く含まれていることは知っていても、1日に必要な量は摂取できているだろうか。
例えば体重60キロの人だったら1日あたり60gのたんぱく質は取らないといけない(4)。体重と同じグラム数が必要なのだ。
運動をしていたり、筋トレをしている人なら体重×2g。上の例だと毎日120g取らないとけないのだ。
- 三大栄養素はたんぱく質・脂質・炭水化物
- 脂質も炭水化物も簡単に取れる
- たんぱく質は意識しないと取りにくい
でも、60gのたんぱく質を毎日摂るのはなかなか大変。
近くに食品のパッケージがあったら見てもらいたい。栄養成分表示欄には三大栄養素のグラム数が書いてあるけれど、多くの食品は脂質か炭水化物が多め、たんぱく質少なめになっているはず。

主食として食べられる米粉麺(フォー)の栄養成分はほとんどが炭水化物
プロテインの出番:1杯40円〜で飲める
そこでプロテインの出番となる。たんぱく質を凝縮している粉末であるプロテインなら牛乳や水と混ぜて飲むことでたんぱく質不足を解消できる。
特にたんぱく質が必要な筋トレ・ダイエット中の人にとってこれは欠かせない。
よくある例えとして、ステーキのヒレ肉なら300g近くも食べてようやく取れるたんぱく質(約60g)が、プロテインを飲めば2回で事足りる。
その効率の良さとコスパの良さ(ステーキのヒレ肉を毎日300g買うのは高すぎる)を求めてみんなはプロテインを飲む。
もちろんメーカーによるけれど、国内メーカーでも安いところだと1杯あたり40円ほどで済ませられるので経済的にも問題なし。
疑問:普通の人はプロテインを飲んじゃいけないの?
昔はプロテインといえばボディビルダーのためのものだった。当時はプロテインパウダーの価格も今ほど安くはなかったし、そもそもAmazonや楽天市場がない時代では、ジムや一部のスポーツ用品店でしか手に入らなかった。
でも近年の健康ブームや筋トレの一般化のおかげで状況は変わってきた。
「プロテイン=たんぱく質を安く効率的に取れるもの」なのであれば、筋トレ以外の使い道もあるはず!との認識が広まってきているのだ。
最近だとダイエットをする人が炭水化物をとる代わりにプロテインを飲んだり(低炭水化物ダイエット、置き換えダイエットなど)、そうじゃなくごく一般の人でも、あまり肉を食べるのが好きじゃない人や、魚はなかなか食べる機会がないって時に摂取するものへと少しずつ使い道が広がりつつある。
@hardgainer_GT
脂身の多い牛肉や豚肉を食べるのが好きではない自分にとってプロテインは本当にありがたい存在。プロテインのおかげで増量時のたんぱく質不足が防げている。
ただ、プロテインを気軽に飲むためのハードルはまだ日本では高いかなというのが個人的な印象。すでにコンビニやスーパーでプロテインジュースが100円台から買えるものの、まだまだ品数は少ないし、たんぱく質含有量も少なすぎる。
願望としては、コンビニレジ横にある100円コーヒーマシンのようにプロテインドリンクバーが店先にでもできないかなと期待している。
- プロテインは悪者じゃない
- プロテインとはたんぱく質の粉
- 筋肉の再生にはたんぱく質が不可欠
- 普通の食事だとたんぱく質は取りにくい
- たんぱく質を摂るための高コスパ手段がプロテイン
- 筋トレしている人以外も使い始めている
参考文献とコメント
- アスリート専用粉飴[粉末]|株式会社HプラスBライフサイエンス
- 日清MCTパウダー 日清オイリオ
- アンチ・ドーピングとは|日本アンチ・ドーピング機構 | Japan Anti-Doping Agency (JADA)
- 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要 - 7.策定した食事摂取基準 - たんぱく質の食事摂取基準
もちろんアスリート以外でも購入可能。私はAmazonで買うことが多いです。
プロテインなどと比べてグラム単価がやや高いので普段使いはしづらいかもしれません。
筋トレ業界がドーピングと完全に無縁な訳ではないですが、一般層にはほとんど関係のない話です。
普通の人なら50〜60gのたんぱく質が推奨量ですが、筋肉を増やしたいならその2倍は必要とされています。
[…] […]
[…] […]