お腹が弱くて冷たい飲み物やフルーツを食べるとすぐにトイレに駆け込んでしまう。もともと痩せているのにお腹をくだしやすいので栄養が満足に取れずにもっと痩せてしまう。
こういった悩みをもっている痩せ型の人は多い。自分もその一人だった。痩せ型だから下痢になりやすく、せっかく取った栄養もうまく消化できずに太れない。負のループに陥ってしまっている残念な体だと思っていた。
しかし、実際に自分の体重を20kg増量させ、体質と下痢の関係性を調べていくうちに、痩せ型が原因で下痢をしやすいのではないこと、そして恐らく自分を含む多くの痩せ型でお腹を下し気味の人たちの原因を理解できた。
そこで今回は、実際に痩せ型で下痢をしがちな体質だった自分の視点から、痩せ型が下痢をしやすい原因を調べたものを共有していく。
参考にした資料:
- 牛乳・乳製品の消費動向に関する調査 第18回(2004年)
- 牛乳摂取習慣と乳糖不耐症
- 食物不耐症と吸収不良症候群 (便秘と下痢の最前線 : 診断と治療のパラダイムシフト ; 下痢診療の最前線)
- グルテン不耐性、セリアック病、及び小麦アレルギーについて(ニューフードインダストリー : 食品加工および資材の新知識 59(12):2017.12 p.44-52)
目次
痩せ型の原因は下痢をしやすい体質
はじめに、よくある誤解を訂正しておく。下痢になりやすいのは痩せているからではない。むしろ、下痢になりやすい体質だからその結果痩せてしまっているのだ。
痩せ型というのは、体質というよりも栄養不足(1・2)の結果
- 栄養を十分に摂取できていない
- 栄養を十分に消化吸収できていない
であり、昔の自分のような人は1番も2番もどちらも大きな原因となっている。
1番の栄養を十分に摂取できていないであれば、そもそもの食べる量を増やした生活を送れば改善するものの、2番目の十分に消化吸収できない点については、その原因を明らかにする必要がある。そこで下痢をしやすくなる人に疑わしい原因を2つピックアップして紹介する。
お腹が弱いのには理由がある。それは単純に「人より胃腸が弱いんだよね」といった曖昧なフレーズで表現できるものというよりも、何か体に合わない食べ物・栄養があると考えた方がいい。そのなかで代表的なものが次の乳糖とグルテンだ。
日本人の9割が該当する乳糖不耐症
『牛乳・乳製品の消費動向に関する調査 第18回(2004年)』によると、牛乳を飲んでお腹の調子が悪くなる人の割合と症状の調査では、牛乳を飲むとお腹の調子が「いつも悪くなる」、「ときどき悪くなる」、「たまに悪くなることがある」と回答した人の割合は、全体の約33%。
男性の20代は39.9%、女性の20代は37.7%がそう答える結果となった。
日本人の乳糖不耐症が多いことは知られていて、乳糖不耐症と判断される人の数は成人で90%近くなるとする研究さえある。
Thus the incidence of lactase deficiency gradually increases with age from 3 years, and about 90% of all normal Japanese adults are lactase-deficient.
引用:Breath hydrogen test for detecting lactose malabsorption in infants and children. Prevalence of lactose malabsorption in Japanese children and adults.(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1545434/)
乳糖は乳製品に含まれる糖類
そもそも乳糖とは牛乳、ヨーグルトをはじめとする乳製品に多く含まれる糖類である。この糖類をうまく吸収できない人が乳糖を摂取するとどうなるかを分かりやすく説明しているのが次の文章だ。
乳糖不耐症のもともとの原因は、小腸粘膜にある乳糖分解酵素(ラクターゼ)という、二糖類である乳糖をグルコースとがラクトースに分解する酵素の活性が弱いことにある。(…)この乳糖がラクターゼによって分解吸収されずにそのまま結腸内に到達すると、浸透圧上昇により水分を大腸内に引き込んで下痢の原因となる。また、結腸内で最近の分解を受け、乳酸、炭酸濃度が上昇するとpHの低下による大腸運動の活発化を招き、先の諸症状が引き起こされる。
引用:日本人と乳糖不耐症 – 牛乳摂取習慣と乳糖不耐症 – 畜産の情報 2008年6 p.60
簡単にまとめると、小腸で乳糖をうまく分解することのできない人は、大腸まで乳糖が到達して水分の多い下痢を誘発するといった内容だ。
乳製品は我々の周りに溢れている食材のため、あまりに多くの人がその気なしに乳製品を摂取しているが、ある閾値を超えた量の乳糖を摂取することが下痢を招くことになるといった結果が示すように、下痢になりやすい痩せ型の人ほど乳製品には気をつけなくてはいけない。
グルテン不耐症は小麦製品が原因
グルテン不耐症は乳糖不耐症と同じように、小麦などに多く含まれるグルテン摂取により引き起こされる。小麦製品は世の中のほとんどのものに何かしらの形で使われているため乳糖同様、避けることが難しい。
そこで現れたのがグルテンフリー食材だ。
グルテンフリー流行の背景
日本でも感度の高い女性向けメディアを中心に、グルテンフリーという言葉をよく聞くようになった。グルテンフリーとは「グルテンが含まれていない食事」を指し、グルテンの摂取により何らかの病気や体調不良を覚える人向けに広まっている食事法。
日本ではおしゃれな新ダイエットの代名詞として使われることの多いこの言葉だが、本場アメリカでは我々日本人が想像する以上に市民権を獲得しているのが現実。
その流行の背景にあるのが、グルテン不耐症をはじめとする症状を訴える人の増加。セリアック病というような難病から、軽度の体調不良を起こすものまで、小麦に代表されるグルテンが原因としてとりわけ消化器系の症状を訴える人が多い。
参考:グルテン不耐性、セリアック病、及び小麦アレルギーについて(ニューフードインダストリー : 食品加工および資材の新知識 59(12):2017.12 p.44-52)
日本ではそれほど一般的になっていないものの、下痢の原因として小麦のような毎日口にするようなものもあることは知っておいて損はない。
まとめ:原因の特定と医療機関への相談はセットで
以上、痩せ型でお腹を下しやすい人に考えられる原因として乳糖不耐症とグルテン不耐症を見てきた。どちらもあまりに身の回りに溢れている食材なので完全に断つことは難しいだろう。
むしろもともと栄養摂取量の少ない痩せ型体質の人が、情報の上部だけを汲み取って独自の食事療法を始めてしまうのは危険極まりないので、不調を感じた際には必ず医療機関へ相談に行くことを強く勧める。
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